名前を呼んで、好きって言って

「謝らないでよ。瑠衣は何も悪くないでしょ」


そう。
これは、誰も悪くない。


正しい伝言ゲームができなかっただけ。


「でも秋保、あんたこれから……」
「瑠衣が真実を知ってる。そうでしょ?」
「そうだけど……」


このときの私は、自分を過信していた。


これくらいの噂に負けるほど、私は弱くない。
ちゃんと知ってくれている瑠衣がいるから、負けるはずがない。


そう思っていた。


「何かあったら、絶対に言ってよ。隠さないでね」
「わかったって。ほら、授業始まるよ」


瑠衣の背中を押し、それぞれの教室に戻る。


「いい子だと思ってたのに……」
「実の姉の恋人奪うとか、何考えてんだろ……」


陰口は私の予想していたよりも酷かった。


あることないこと言われる。
知っている人からも、知らない人からも。


仲良くしてくれていた人たちが敵に回るのも、そう時間はかからなかった。


私はあっという間にクラス、学年、そして学校で孤立した。


時間は解決してくれなかったし、予想以上に敵が増えたことで、私は気丈に振る舞うことができなくなっていた。


「秋保」


それでも瑠衣は味方でいてくれた。
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