名前を呼んで、好きって言って

彼氏ができたと報告したとき、複雑な顔をしていたのは、そういうことだったのか。


きっと、私と話してくれなくなったのも、それが理由だろう。


「それは一週間くらい前に私が聞いた。で、それを誰かが聞いてたみたいなんだけど、いつの間にか、美桜の彼氏を奪おうとしているってなって。秋保は陰口を言われてた」
「そんな……」


正直理解できなかった。
でも、少し前に「彼氏、取られないようにね」と言われた理由がわかった。


その人たちは噂を知り、信じたのだろう。


そして親切のつもりでそんなことを言ってきた。


もう、何を言っていいのかわからなかった。
だけど、一つだけわかることがある。


「私のせいで……」


私のせいで、秋保はたくさん傷付いていた。


瑠衣が私が行っても秋保を傷付けるだけというのも納得がいく。


「まったく……お互いがお互いをかばって。本当、仲良しなんだから」
「そんな呑気なこと言ってる場合じゃないよ」


これ以上、秋保を傷付けないようにするために、私にできることは……


「……流星と別れてくる」
「は?」
「だって、そうすれば噂はなくなるでしょ」


それに、好きな人が自分の姉と仲良くしているところを見るのもつらいはずだ。
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