名前を呼んで、好きって言って

私にできるのは、流星と別れることだけだ。


「ちょっと待ってよ。今あんたたちが別れたら、秋保がなんて言われるか……」
「じゃあ、噂が静まるのを大人しく待てって言うの?」
「それは……」


瑠衣は目を伏せた。


「……瑠衣、秋保を守ってくれてありがとう」


そう言って教室を出ると、私は流星のもとに向かった。


「……その噂なら、聞いたことがあるよ」


流星は秋保の噂を知っていたらしい。


本当に知らなかったのは、私だけだったということか。


「……なら、話が早い。流星、私と別れて」
「ちょ、ちょっと待ってよ。どうして俺らが別れなきゃいけないんだよ」


流星が慌てるのも無理なかった。


だけど、何を言われたって、私は秋保を選ぶ。


「これ以上秋保を傷付けたくないの。さよなら」
「待てって!」


流星は去ろうとする私の手を掴んだ。


「納得いかないんだけど」
「だから、秋保を傷付けたくないって言ったでしょ。流星と付き合ってたら、秋保は笑ってくれない」
「意味わかんないんだけど」


ここで秋保が流星のことを好きだと言えば、早いことはわかっていた。


だとしても、それは言えなかった。


秋保の気持ちを、私が勝手に伝えていいはずがない。
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