名前を呼んで、好きって言って

「今日、別れてきたから」
「え、なんで!?」


答えないと決めていたのに、思わず声を出してしまった。


「だって……これ以上付き合ってても、秋保を苦しめるだけでしょ?」
「……私のせい、なんだね」


私のせいで、二人は別れることになった。


私が瑠衣に本音を言わなければ。
あの噂がなければ。


二人が別れることなんてなかったのに。


ちゃんと幸せになれたのに。


私がその幸せを、壊してしまった。


「違うよ、秋保。私の話を聞いて」
「違わない!」


全部、私のせいだ。


「もう……ほっといてよ……」


きっと、私たちはもうわかり合えない。
これ以上美桜と話しても、私が惨めな思いをするだけ。


だったら、話したくない。


「……ごめんね、秋保」


その言葉を最後に、美桜の気配がなくなった。


一人になって、ずっと同じことを考えていた。
後悔していた。


そして、これからのこと。


今まで、私が美桜から彼氏を奪おうとしているという、嘘の噂が流れていた。


でも、美桜たちが別れたことで、今度は真実が広まっているだろう。
私が二人を引き裂いたという、真実。


こればかりは否定できないし、今まで以上に軽蔑の目で見られる。
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