名前を呼んで、好きって言って
美桜だってつらい思いをしたはずなのに、私のことまで考えてくれていたなんて。
私は自分のことでいっぱいいっぱいなのに。
本当、どこまで優しいんだろう。
「秋保、聞いてるの?」
「……今の私に、行ける高校なんてないよ」
いわゆる引きこもりになって、私はまったくもって勉強をしていなかった。
当然学力は落ちている。
「高校にも行かないなんて、許さないからね」
「え、でも」
「でもじゃない。この際どこでもいいから、高校には行くこと。いい?」
ここで反抗する勇気は、私にはなかった。
「……はい」
そして私はお母さんと勉強をして、近くの高校に合格した。
そこは不良が行くようなところだと言われていて、はっきり言って偏差値は低い。
だけど、私は選べる身ではなかったから。
仕方ないと受け入れた。
お母さんもどこでもいいと言っていたから、文句は言ってこなかった。
ちなみにちゃんと勉強をしていた美桜と瑠衣は、隣町の進学校に合格したらしい。
瑠衣にはおめでとうと言えたけど、美桜には言えなかった。
そんな私たちを見て、お母さんは「早く仲直りしなさい」と言ってきたけど、やっぱりできなかった。
そして同級生がいる教室ではなく、保健室で、私は高校生活をスタートさせた。