名前を呼んで、好きって言って
傷ついた表情をする春木君を見て、言葉が出てこない。
「俺のこと嫌い?」
笑っているけど、間違いなく傷ついている。
「えっと……春木君が嫌いというか……私……人が、怖いんです……」
素直に答えると、春木君は先生に座らされた席に移動した。
「ここなら大丈夫?」
「多分……」
あの日以来あまり人と話してこなかったから、どれくらいの距離が平気なのか、自分でもわからない。
だから、曖昧な返事をしてしまった。
「じゃあ、俺はここにいるね」
だけど春木君はそんな私の答えを信じて、笑った。
春木君の笑顔に、申し訳なくなる。
「ところでさ」
謝ろうとしたのに、春木君は全く気にしていなかった。
春木君は今日渡された課題を指さした。
京峰先生が春木君を呼びにいっている間に、名前だけ書いたんだった。
「秋保の名前と俺の名前、似てるね」
急に下の名前を呼び捨てされ、戸惑う。
しかしそれ以上に、どこに似ている要素があるのかわからなくて、反応に困る。
春木君は近くにあったペン立てから鉛筆を取ると、私の課題に何かを書き始めた。
私の名前の上に、反対向きで『翔和』という文字が書かれる。