名前を呼んで、好きって言って
仲直り
打ち上げの次の日、私は手ぶらで登校した。
逃げ出したあのとき、私はカバンの存在を忘れていた。
というか、スマホ以外全て置いて逃げた。
あのあと、清花ちゃんから明日持っていくと連絡があった。
何があったのかも聞く、と。
過去にあったことを話す勇気は、私にはなかった。
でも、本当のことを言う必要はなくて、清花ちゃんには簡単に説明しようと思った。
「秋保。昨日男は誰だ」
……春木君からは逃げられないと、予想していた。
春木君だけでなく、翠君も柊斗さんもいる。
「……こんなに早くから来てるなんて、珍しいね」
「君に話を聞くんだって、翔和が張り切っちゃって。僕たちはまあ……野次馬?」
翠君も柊斗さんもあれを聞いていたわけだから、気にならないほうが無理な話か。
「……あの人に聞かなかったの?」
春木君たちなら、てっきり聞いているものだと思った。
「君が逃げたすぐあと、あいつも翔和と柊斗にビビって逃げた」
「あー……なるほど」
あれはたしかに怖かったから、そうなってもおかしくないか。
「で、秋保。あれは誰だ」
「あの人は……姉の元彼だよ」
私のではなかったことに安心したのか、春木君はそれ以上聞いてこなかった。