名前を呼んで、好きって言って
それしか興味がなかったらしい。
「アイツ、君のせいで不幸になった、みたいなこと言ってたけど、それは?」
野次馬だと言った翠君のほうが気になっている。
と思ったけど、春木君も真剣な表情をして聞き始めた。
どうやらあの人が何者かが気になって、言っていた内容は忘れていたらしい。
……翠君に適当なことを言っても、納得してくれなさそうだ。
「……私があの人のことを好きだって姉が知って、姉が別れを告げたから……かな」
簡単に言えば、それだけの話だ。
だから笑って言ってみるけど、上手く笑えている自信はなかった。
「秋保……アイツが好きなの?」
春木君は今までに見せたことないくらい、落ち込んでいる。
そうか。
私を好きだと言ってくれる春木君にとって、これは大事な問題なのか。
「ううん、今はまったく」
完全否定すると、春木君は満面の笑みを見せてくれた。
もう二度と見れないと思っていたから、なんだか泣きそうになる。
「……もしかして双子の姉と気まずくなったのって、それが理由?」
そういえば翠君は美桜の存在を知っていたっけ。
「まあ、そうなる……かな」
「未練もなさそうで過去のことなのに、まだ引きずってるの?」