名前を呼んで、好きって言って
そういえば最初、春木君の距離感の近さに戸惑って、拒絶したっけ。
一ヶ月も経ってないのに、随分昔のことのように感じる。
「秋保は昔の秋保とは違う。だから、大丈夫」
春木君は、適当に言ってるわけじゃなかった。
本気で、私ならできると信じてくれている。
「……ありがとう、春木君。私、頑張ってみる」
私が笑顔で言うと、春木君も笑った。
「なーんか、いい雰囲気になってない?」
後ろから声がして振り向くと、清花ちゃんが少し不満そうにしてそこにいた。
「清花ちゃん。おはよう」
「おはよう。これ、秋保ちゃんのカバンね」
「ありがとう」
清花ちゃんから、昨日置いて帰ってしまったカバンを受け取る。
「で。何話してたの?」
「昨日のことだよ」
「待って、私も聞きたいって言わなかったっけ?」
もちろん覚えている。
でも教室に入って一番に、春木君が昨日のことを聞いてきたから、正直清花ちゃんが来るのを待ってはいられなかった。
「清花も昨日の男のことが気になってたのか?」
「男っていうか、私、なんで秋保ちゃんが帰ったのか知らないから」
春木君とのことでからかわれそうになって逃げたところで、あの人に会ったんだった。
そして、さらに逃げたわけだけど。