名前を呼んで、好きって言って

馬鹿にしているというより、普通に驚いているように見える。


「翠君は、私が困っていたら絶対に助けてくれるんです。だから私も翠君の力になりたかったのに……」


それなのに、できなかった。
思っているだけでは意味がないのに。


「ねえ、秋保。実はさっきの彼のこと好きだったりする?」


私たちの会話の雰囲気を見ていなかったのかと思うほど、美桜は楽しそうだった。
会話の流れもない。


「なんだ、そうだったのか。それは悪いことをした。好きな奴のかっこ悪いところは見たくなかっただろ」


紅羽さん、意外と恋バナできる人だ……


「いえ、あの、私の好きな人は翠君じゃない、です」
「やはりあの弱虫は嫌いか」
「そうとも言ってないんですけどね」


この好きか嫌いかをはっきり決めてしまう感じ、春木君に似ている。


「秋保、好きな人いるの? どんな人?」


私と久しぶりに話せることが嬉しいのか、恋バナが楽しいのかわからないけど、美桜はいい笑顔をしている。


どんな人、か……


「一途な人、かな。優しくて、人気者で、一緒にいると笑顔になれるの」
「うんうん」


いくら親友みたいな存在だったとしても、やっぱり美桜は私の姉なわけで、身内にこういう話をしていると思うと、急に恥ずかしくなってきた。
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