名前を呼んで、好きって言って
紅羽さんは観念したのか、ため息を一つ吐いた。
「……お前たちが想像しているような面白い話はないぞ」
「いいの。あの恋愛には一切興味ありませんみたいな顔してる紅羽が恋愛をしているってだけで、価値があるから」
それぞれ知り合いが違うから当然だろうけど、私と美桜が紅羽さんの話に興味を持った理由がまったくもって違った。
でもまあ、話が聞けるならなんでもいい。
「……しゅうは、初恋相手だ。あれは……小学二年か三年くらいだったと思う」
かなり早い。
二人……というか、三人か。
そのころからの友人となると、幼馴染と言うにふさわしい存在だろう。
「私はしゅうが私以外の人間と話すことが気に入らなかったんだ。だから、アイツに私のことが好きなら、私以外の人と話すなとわがままを言った」
「何それ、超可愛い」
そういう反応ができるのは、今の柊斗さんを知らない美桜だけだろう。
紅羽さんは切なそうに笑っている。
「可愛くなんかないさ。私がそんなことを言ったせいで、しゅうは本当に誰とも話さなくなったんだから」
美桜の表情が固まる。
「……秋保。今、しゅうは友達ができているか?」
紅羽さんはなんだか苦しそうで、そんな紅羽さんを解放してあげたくて嘘をつきたくなる。