もうそばにいるのはやめました。


せっかく一緒に暮らしてるのに。

仲良くなれるならなりたいのに。


近づけば近づくほど遠ざかっていく。



お父さんとお母さんが恋しかった。



泣きべそをかいていてもお腹は空く。


リビングで1人ご飯を食べる円を一瞥しながらキッチンに立った。


初めての料理。

包丁を握ったことすらなかった。


お母さんの好物のオムライスを作ろうと、とりあえずまな板の上に思いつく限りの野菜を置いた。




『よし!いざ……!』


『ちょっと待て!!』


『……へ?』


『へ、じゃねぇよ。なにするつもりだ』


『なにって……野菜を切ろうと……』


『なんで包丁を縦に持ってんだよ!危ねぇな!』


『……じ、じゃあ、どうやって持つの?料理なんてやったことないからわからなくて……』


『は?やったことない?……ああそうか、お嬢さまだったんだっけ』




円は仕方なさそうに料理の仕方を教えてくれた。


厳しかったけど、丁寧で。

やっと距離が縮まった気がした。




『ぎゃー!指……指がああ!!』

『ちょっと切っただけだろうが』



『熱っ!!』

『そこ触んな!』



『お米も流れちゃう……!』

『なんで全部捨てようとしてんだよ!』




奮闘した末にできた、初めての手料理。


焦げ目の多くて見た目の悪いオムライス。



それでも今までで一番おいしかった。


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