もうそばにいるのはやめました。
嫉妬どころじゃなくなっちゃいそう。
……って嫉妬してたら「好きだった」がまた遠のいちゃうよ!
「今年も皆、寧音ちゃんのこと絶賛してたよ。『あの子はどのクラスだ!?』『すごくかわいい!!』『バイオリン感動した!』って」
「へ……!?で、でも……かわいく見えたのはハルくんがいろいろしてくれたからだし、演奏だって円のバイオリンがあったからで……!」
「そうけんそんしないで。たしかに晴澄や相松くんの手助けもあっただろうけど、エンディングが成功したのは寧音ちゃんが頑張ったからだよ」
「が、頑張ってたのはナツくんもでしょ!!」
そうだよ!
ナツくん、誰よりも頑張ってたじゃん。
文化祭のMVPは絶対ナツくんだったよ。
異論は認めません!
ハルくんとおそろいのヘーゼル色の双眼がわずかに瞠られると、ゆるく垂れる。
ポンポンと頭を撫でられた。
「寧音ちゃんは優しいね」
「そんなこと……!」
「優しいよ。だから音色もあんなに優しかったんだろうな」
自分じゃわからない。
わたしの音は優しいの?
優しい音ってどんな?
エンディングのステージはただただ楽しかった記憶しかない。
拍手に包まれてようやく演奏が終わっていたことを自覚した。
スタンディングオベーションだった。
涙を流してる人もいた。