もうそばにいるのはやめました。
*
放課後になり、生徒玄関で靴を履き替えようとしたら。
「……あああっ」
靴箱のふたを開けると、手紙がなだれてしまった。
……またか。
靴箱の中にも手紙がぎっしり詰まってる。
ローファーが見えない。
エンディング効果は告白にとどまらず、こうやってラブレターやファンレターもたくさんもらうようになった。
げた箱に手紙って、フィクションの中でしか見たことなかったけど……。
「実際に入れられると手紙が汚れちゃうんだよね……」
地面に落下した手紙を一枚一枚拾いながらぼやく。
ああほら、きれいな封筒に砂がついちゃってる。
せっかく送ってくれた手紙なのに汚れちゃったらもったいない。
「それ全部ラブレター?」
「ぜ、全部じゃ……!」
全て拾い上げると、視界の隅に茶髪が留まった。
「た、武田くん!!」
真横からわたしの靴箱を覗き込む武田くんから、思わずあとずさる。
い、いつの間に……!?
「円も気が気じゃねぇわけだ」
「彩希、離れろ」
「へいへ~い」
武田くんのうしろには円もいた。
……あ。
円、右でカバン持ってる。
腕はもう大丈夫なのかな。