もうそばにいるのはやめました。
「竜宝さんも大変だな」
「え?」
またいたわれてしまった。
ナツくんも武田くんもどうしてわたしのことを気遣うんだろう。
「昼休みには告白されてたし、手紙もそんなもらってさ。モテるのってうれしいけど疲れねぇ?」
疲れる。
その言葉が悪い印象には感じなかった。
武田くんの表情がいつになく切なく歪んでいたから。
いつも明るいムードメーカーで。
文化祭でも「好き」をくれる女の子をエスコートしていた。
でも本気で応えてるところを見たことはない。
女の子に優しく笑いかけて。
ときには無理をしてでも相手を思いやっていたんだろうな。
全員に本気で応えたら
辛くて、辛すぎて
心が疲れてしまう。
「……疲れちゃうかもね」
だけど「好き」って言われたら、うれしさが勝っちゃうよ。
武田くんもそうでしょ?
「全員にお返事書いたら、手が疲れて明日はノート書けなくなるな」
靴箱の中に詰められた手紙も全て回収し、喜色を浮かべた。
ふっ、とふきだした武田くんの表情が晴れやかになる。
「竜宝さんがモテるのわかるわ~」
「文化祭マジックでしょ?わたしもちゃーんと自覚してます」
「いや~、文化祭はきっかけにすぎないって。これからもっとラブレターもらうと思うぜ?」
「えぇ、そうかな?」