もうそばにいるのはやめました。
逆だと思うけどな。
文化祭マジックがだんだん冷めてきて、ラブレターが減っていく気がする。
「これからもりちぎに返事書くつもりなら大変どころじゃねぇよ。いっそ恋人のフリしてくれるやつ探したほうが手っ取り早いんじゃね~?」
「あはは、それもいいかもね」
ラブレターが増えるならね。
でもさすがに武田くんの予想ははずれると思うなぁ。
「なあ、円もそう思うだろ?」
話を振られた円はなにも言わない。
じっとわたしのことを見つめるだけ。
ドキドキと速くなる鼓動が円にも聞こえていそうで、恥ずかしくなってうつむいた。
円が黙ったままなのは、円もわたしがモテるって考えてないからだよ。
文化祭マジックにもかかってはくれなかったのに、武田くんと同意見なはずない。
「……じ、じゃあ、わたし帰るね。バイバイ」
手紙をカバンにしまい、ローファーを履いた。
いたたまれなくて急ぎ足になる。
とたん――グッ、と後方に引っ張られた。
え……?
な、なに?
「寧音」
ウソ。
なんで。
「……円」
左の手のひらを円の右手にぎゅっとつかまれていた。