もうそばにいるのはやめました。
びっくりした?
へへ、すごいでしょ。
楽器店に勤めてると教えると、姫らしいとほめられた。
「わたしも毎週働いてるし、家事だってする。もうお嬢さまじゃないから」
毎日の支度からお茶の淹れ方まで、失敗しながらこなしてきた。
オムライスは今じゃ一番の得意料理だし、ニキビは定期的にできちゃう。
わたしはもう
どこにでもいる平凡な女子高生なんだよ。
「それでもわたしを守りたいって思う?」
「守りたいっす」
即答だった。
迷いのないハルくんに、言葉がつっかえる。
「僕にとっての“姫”は、姫しかいないんす。初めて会ったときからずっと、お嬢さまじゃなくなったって……姫が僕の“生涯の主”っす!」
わたしだってそうだよ。
わたしの専属執事は、これから先もハルくんだけ。
『おひめさま』
『……は、はい』
『ぼくにきみをまもらせて?』
『うん。わたしのこと、まもってね』
あの出会いのときのままだったら。
わたしが本物のお姫さまだったら。
そんなたらればはむなしくなるだけ。
「……また、出会えるかもしれないじゃん。新しいお姫さまに」
「無理っす」
また即答!?