もうそばにいるのはやめました。
「姫!今日も雨が降るようなので傘をどうぞっす!」
「あ、ありがとう……」
用意しゅうとうすぎる!
ハルくんの言うとおり、くもり空。
今にも雨が降り出しそう。
ハルくんがいてくれて心強いけど……。
「ハルくん……学校まで送るってほんとに?」
「もちろんっす!男に二言はありません!」
あってもいいだよ?
と思うのはわたしのわがままだろうか。
「ハルくんが学校に遅れちゃうんじゃない?」
「大丈夫っす。この時間なら余裕で間に合います」
「……ならいいけど……」
「あっ、もしかして車の送迎がよろしかったっすか!?すみません、すぐ手配するっす!」
「ちがうちがう!手配しないで!!」
タクシーを呼ぼうとしたハルくんを急いで止める。
わたしが公立学校に入学して半年をすぎたんだよ?
もう徒歩での行き方は熟知してるよ。
けねんしてたのは登校する方法じゃない。
ハルくんと一緒にいる時間が長くなるほど、またハルくんの存在が当たり前になっちゃうのが怖いの。
「……あのさ、ハルくん」
「なんすか?」
「やっぱりわたしたち……」
「?」
「……わたしたち、一緒にいたら前に進めないんじゃないかな」
ためらいながらも伝えると、ハルくんの表情から感情が抜け落ちた。涙をこらえるみたいに下唇をきゅっと締める。
「ま、前に、って……」
「――あっ、竜宝さん!」
遠くから声をかけられた。
あっという間に学校付近まで来ていたようで、周囲はブレザーの制服姿だらけ。
わたしを呼び留めたのも、そう。
「昨日の……」
昨日の昼休みに告白してくれた2年生の先輩だった。