もうそばにいるのはやめました。


あ、昨日と同じ。

先輩の顔、赤い。



「俺、昨日はすごく物分かりいい優しいフリしてたけど……やっぱあきらめらんなくて」



『そっか。ちゃんと振ってくれてありがとう』


あのセリフは、笑顔は、虚勢だったんだ。



……あぁ、ほら、思ったとおり。


わたしには好きな人がいるのに

好きな人じゃない人から「好き」をもらい続けたら


困ってしまう。



どう応えるのが正解かわからなくて。


傷つけたくなくて。



「好き」はうれしいのに……うれしいだけ。



円もこんなに困ってた?

……困らせちゃってた?



「姫」


「っ、は、ハルく……!?」



言葉を探していたら、ハルくんに腕を引かれた。


否応なしに歩かされる。



「え、ま、待って!」



先輩の制止をスルーして、ハルくんは足を速めた。



「ハルくん!」


「……あいつ、なんすか」



わたしの腕をつかんで早歩きしながら聞いてきた。


ハルくんの背中しか見えなくて、感情を汲み取れない。




「先輩だよ。昨日……その……こ、告白してくれて……」


「…………」


「え、えっと……わ、わたし今モテ期なんだよ!すぐ終わるだろうけど……手紙もたくさんもらうし!」


「…………」


「恋人のフリでも誰かに頼もうかなって考えてるくらい。……なーんちゃって。……あはは、は、は……」



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