もうそばにいるのはやめました。
「僕が姫の……!」
つながりかけた手は
――グイッ
ななめうしろに持っていかれた。
「俺の彼女になにしてんの」
引き寄せられた体が誰かに当たる。
強くて優しい触れ方。
頭上から降ってきた冷たい声。
……間違いない。
「円……っ」
後頭部が円の胸の中におさまる。
ドキ、ドキ、ドキ。
この鼓動はわたしの?円の?
「い、今、なんて……」
驚がくと悲嘆をにじませるハルくんを前に、ようやっと状況をはあくする。
そうだ。さっき円はなんて言ったの?
わたしの空耳?
俺の、彼女って。
「俺の彼女に手ぇ出すな」
「えええ……っ!!」
この場にいる誰よりもわたしが一番驚いてる。
つい絶叫したら円の手に口を覆われた。
どういうこと!?
「行くぞ」
「んんんっ」
口を覆われたまま円に校舎のほうへ連れて行かれた。
先輩に返事してないし、ハルくんともなあなあな状態だし、置き去りにしたらごかいをとけないじゃんかー!!
抵抗しても効き目なし。
気づいたら人気の少ない廊下まで進んでいた。
そこで解放されてすぐ
「円のバカ!!」
おもいっきり怒鳴り散らした。