もうそばにいるのはやめました。
うわさって怖い。
いつどうやって広まっちゃうの!?
今度こそちゃんと訂正しなくちゃ。
「ち、ちが」
「本当だ」
ばっさりさえぎられた。
タイミング悪くやってきた、円に。
「へぇ~、マジだったんだ」
「ああ」
「世話係から彼氏にランクアップか~。よかったじゃん」
ちがう。
ちがうよ。
彼氏じゃない。彼女じゃない。
ただのクラスメイトだよ。
どうして皆の前でウソをついたの?
もしかして本気で恋人のフリをするつもりなの?
振られた相手に恋人のフリをされたって……困るよ。
円も困るんじゃないの?
忘れられない人に知られたらどうするの。
わたしがずっと「好きだった」に変えられなかったらどうするの。
……全部、円のせいだ。
うわさを信じ切ってるクラスメイトに今さら否定しても、照れてると思われて笑って流されるだろう。
祝福モードの教室はひどく居心地が悪くて。
「わ、わたし、係の仕事があったんだった!」
なんてわかりやすい言い訳を作って、教室を飛び出した。
「……ねぇ、本当に付き合ってるの?」
「……ああ」
「それにしちゃ竜宝さん、暗かったな~?」
「……気のせいじゃねぇの」
ひとり席についた円に、違和感をおぼえた穂乃花ちゃんと武田くんは顔を見合わせる。
窓際、一番うしろ。
最高のポジションであるはずのその席は、今日はどこか物寂しそうだった。