もうそばにいるのはやめました。
*
……今日は一段と疲れたなぁ。
うわさで盛り上がるクラスの女の子に事情聴取され、クラスの男の子には冷やかされた。
穂乃花ちゃんとのおしゃべりでも円の話題が多かった。
『相松くんって顔はいいよね、顔は』
『ああいうタイプって付き合ったら苦労しそうだよね』
円のことをほめたりお付き合いのこと話したり……やっぱり穂乃花ちゃんも円のこと好きなのかな?
武田くんには
『あいつのことよろしくな』
って言われちゃったし。
その『あいつ』は隙あらば声をかけようとしてきた。
『寧音』
『ああっ、わ、わたし用事が……!』
『なあ』
『な、ナツくんに借りた物が……!』
ふたりで話す時間を作りたくなくて必死に避けてた。
なんとか放課後まで頑張れたけど、明日もこんな感じなのかな。
「わたし、体力持たないかも……」
肩を落としながら生徒玄関で靴を履き替える。
今日も靴箱にはたくさんの手紙が入っていた。
ひとつ残らずきちんとカバンにしまう。
わたしもラブレターを書いてみたら、気持ちにけじめをつけられるのだろうか。
「寧音!」
「!?」
ローファーを履くと、背後から円が接近してきた。
反射的に逃げる。