もうそばにいるのはやめました。


わたし、どんな顔してたんだろう。


ハルくんが苦しそうにしかめるほどひどい顔だった?



「守るよ」



円の声がひと際心臓に響く。




「寧音は俺の手で守る」


「ウソだ!」


「本当だ。俺は……」


「ウソだよ!!」




思わず反論していた。


ときめいてる自分をかき消したくて。



円には守れないよ。

守られたくない。



だって、わたしはもう、そばにいるのをやめたんだ。




また逃げた。


今日は逃げてばっかりだ。



うしろから「寧音!」「姫!」と呼びかけられても振り返らなかった。



立ち止まらずに手足を動かし続けた。


運悪く雨が降り出す。



……今日、お母さん夜勤だ。

こんな錯乱したまま帰宅したら心配かけちゃう。



傘をさしながら近くの公園にひなんした。


公園の奥にある屋根の下に駆け込んだ直後、雨足がはげしくなっていった。



昨日は小雨だったけど今日はどしゃ降りだ。



雨が落ち着くまでここにいよう。

頭も冷えるしちょうどいい。



ベンチに座って、雨音に耳をすました。



「わたしってけっこう自分勝手だったんだなぁ……」



最低だ。

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