もうそばにいるのはやめました。


円の話を聞くのが怖くて。


辛い思いをしたくなくて。



「……自分のことばっかりだ……」



いつからこんなにも弱くなってたんだろう。

失恋したショックで?


初めての恋だから傷も深いのかもしれない。



振られて自信なくなっちゃったよ。


円の“一番”はわたしじゃない。



特別は他にいるって直接教えられたのに期待なんかできるはずない。



「ああっもう!!」



太陽の隠れたどんよりした空を仰ぐ。



「未練がましい!あきらめ悪い!弱虫!おくびょう者!自己中!面倒くさい!」



どうせ雨音だ。
誰にも聞こえない。

もっと声を荒げちゃえ。



「わたしのアホおおお!!!」



――ゴロゴロ……ピッシャーン!!



「うおっ!?」



……空に怒られた。



あ、またピカッて。


イナズマが散り、雷鳴がとどろく。



雷……か。

あの梅雨入りした夜を思い出す。



『……な、に、して……』

『大丈夫だよ。わたしがそばにいる』

『なんで……っ』



円、雷が苦手なんだよね。


おびえる円を抱きしめたっけ。



あの日から急激に仲良くなっていった。



「円、大丈夫かな……」



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