もうそばにいるのはやめました。
言葉とは対照的に声色はか細くて、らしくなく頼りない。
すがりつくように震える腕を力ませてる。
「わ、たし……っ」
力の抜けた手で円の濡れたシャツのすそをつかんだ。
「わたしも、そばにいたい」
涙をこらえられなかった。
灰色の表面を閃光がてんめつする。
すさまじい音がまた鳴り渡る前に抱きしめ返した。
強く、強く。
冷たい感触もどうでもよくなるくらい。
ほんのわずかな隙間も埋めた。
「円が好き……。どうしても『好きだった』にできなかった」
「『だった』なんかつけなくていい。ずっと好きでいろよ。俺もずっと変わんねぇから」
耳をくすぐる低音が心地いい。
雨もまったく気にならない。
自惚れじゃない。
フリでもない。
今日からわたしは本物の彼女なんだ。
円のそばにいていいんだ。
「好きだよ」
甘いささやき。
涙がこぼれるのに口角は上がってしまう。
うん、わたしも好き。
その返事は泣きじゃくりすぎて声にならなかった。
でもいいの。
きっと円には届いてる。