もうそばにいるのはやめました。
真っ赤な「好き」
見慣れた扉。
円の家の前。
インターホンに伸ばした指をパッと引っ込めた。
「き、き、緊張する……!」
土曜日の正午すぎはやけに太陽がさんさんとかがやいているのに、緊張のしすぎでちっとも暖まらない。
久し振りの円の家っていうのもあるだろうけど、客としておじゃまするのが初めてだからそわそわしてしまう。
しかも!今日は!
円の家でおうちデートだし!!
きっかけは両思いになってすぐ。
雨が弱まってきたころ、ハルくんが遅れて駆けつけた。
わたしと円が付き合うことになったと打ち明けると、ハルくんははがゆそうにした。
『……姫は、もう、前に進めてるんすね』
『ハルくん?』
けれど一瞬で笑顔になった。
『なんでもないっす!よかったっすね!』
『ありがとうハルくん。迷惑かけてごめんね』
『謝らないでください!それに迷惑をかけたのは僕のほうっす』
『そんなことないよ!』
『僕、今日は家に帰るっす。わがまま言ってすみませんでした。姫を捜してる途中に親から電話がかかってきて、めちゃくちゃ叱られました。姫に迷惑かけるな、って。それに学校のテストも近いし、執事の勉強もほったらかしにしてたら守りたい人も守れないぞ、って』
『わたしもだよ!昔のクセでついハルくんになんでも任せちゃって……』
『……いえ、今の僕は力不足だって、痛感したっす。姫にまた会えてよかったっす。家に帰ってしっかり修行し直してきます!』
力不足なんてことないと思うけどな。
今でも十二分に優秀だよ!