もうそばにいるのはやめました。


文化祭の思い出を回想しながら、ローテーブルの前に腰を下ろした。


カバンの中から教科書とノートと筆箱を取り出す。



……なんてムードのない。


いやいや!
数学の教科書があっても立派なデート!


勉強会デートだ!!



「この前はやべーっつってたけど、寧音ならそこそこできんだろ?」


「そこそこできても難しいところはできないじゃん!勉強をあと回しにしてた分、基礎をしっかりたたきこんで応用問題も解けるようにならなくちゃ!」



目指せ100点!

学年順位もさらに上を狙うぞ!



「……幼なじみのやつと、似てるな」


「え?ハルくんと?」



似てるかな?

わたしもだいぶ向上心が強めだけれども。


ハッとした円はくしゃりと前髪をかき上げてうつむいた。



「……わりぃ、今のなし」


「へ?」


「忘れてくれ」



なしってなにが?

似てるって言ったこと?なんで?


疑問しかなかったけど、円の表情がくもっていたから訊くのはやめておいた。



「自分からあいつの話題出してどうすんだよ」



ちっぽけな独白は、教科書を開く音に吹き飛ばされた。


ちょうど開いたページに、わたしと円が以前先生に注意されて黒板に解答を書いた問題がけいさいされていた。

< 134 / 191 >

この作品をシェア

pagetop