もうそばにいるのはやめました。


ほんのちょっと眼を持ち上げて正面をうかがう。



まつ毛長い。

きれいな指。

ノートに書きつづっていく字がすごく上手。



こんなにも近くから円を観察するのはいつ振りだろう。


いつ見てもかっこいい。
夢の中の王子さまよりずっとずっとかっこいい。


こっちの円が夢だったらどうしよう。



「手止まってるぞ」


「目が合った!夢じゃないかも!」


「はあ?」



なに言ってんだこいつって目してる。


だってだって最近いいことばっかりだから。

円と両思いになれてデートできて。


それらが全部夢で、起きたらまたそばにいるのをやめなきゃいけなくなったら……メンタルがやられちゃうよ。



「夢じゃない……よね?」



心配になっていたら円にほっぺをつねられた。




「いひゃいいひゃい……!」


「夢だったか?」


「……ちがいました」


「だろうな」




相も変わらず冷たい円は、なにごともなかったように再び問題を解き始めた。




「……うん、やっぱりこれは夢じゃない」


「まだ言ってんのか?」


「なぜかって?それはね!」


「……聞いてねぇし」


「この服着てても、円が『似合わねぇな』って言わないから。だから夢じゃない。これはまぎれもなく現実!」


< 136 / 191 >

この作品をシェア

pagetop