もうそばにいるのはやめました。
去年の誕生日にハルくんから手作りケーキと一緒にプレゼントしてくれた、このガーリーなワンピース。
もらった当時は背のびしてるようだったのに、今ではちょっぴり乙女ちっくに感じる。
同居中にこのワンピースを着たのが
7月1日――わたしの誕生日だった。
パーティーはもちろん、出かける用事も特になかったのにワンピースを選んだ。
さりげなく円にその日がわたしの誕生日って教えてはいたけど、祝ってもらえるとは思ってなくて。
せめて「かわいい」ってほめられたかった。
案の定
『似合わねぇな』
って一刀両断された。
だけど今日はなにも言ってこない。
またがっかりするくらいなら言われないほうがいい。
せっかくのデートで気分を落としたくない。
「あっ、れは……!」
なにか思い出したのか、見開かれた黒い目が右へ左へ泳ぎ出す。
「……て、照れ隠し、だろ」
「なにが?」
「だから!……そ、その、俺が言ったこと、だよ」
照れ隠し……。
そ、それじゃあ!
あの『似合わねぇな』は本心じゃなかったってこと!?
「本当はか、かわいい……って、思ってたけど……あんときはいろいろバレねぇように準備することばっかに気がまわってたし、つーかそもそもその服着てるとこ見たのも初めてで見惚れ……い、いや、その……び、びっくりしたし……」
「待って!」
「……な、なんだよ」
「もう一回言って!」
「は?なにを……」
「かわいいって!今!言ったよね!?」