もうそばにいるのはやめました。


円のほうにズイッと顔を近づける。


わたしは聞き逃さなかったよ!

最初にボソッと『かわいい』って言ってた!


もう一回聞きたい!!



赤色を濃くしていく円の照れ顔が、あきらめたようにゆるやかにしかめられた。




「……言ったけど」


「もう一回!」


「…………」


「だ、だめ……?」


「……か、かわいいって、思ってるよ今日も」




あの円が『かわいい』って!『今日も』だって!!


ほめられちゃった!

「好き」の次に言われたかった「かわいい」。


想像してた以上に幸せ。



「『かわいい』が『好き』って聞こえた……」


「耳おかしいんじゃねぇの?」



好きな人からの「かわいい」は特別なんです。

「好き」って聞こえちゃうものなんです。



『今日も』ってことは毎日思ってくれてるってことだよね?


わたしもだよ。

毎日円がかっこよくて、惚れ直してる。



かわいい彼女とかっこいい彼氏なんて最強じゃない?




「てか俺が準備して祝ったことよりそっちに食いつくのかよ」


「だって好きな人には『かわいい』って思ってもらいたいから……」


「ふーん?」


「でも円が誕生日を祝ってくれたのも、本当に本当にほんとーにうれしかったよ!準備してたことに全然気がつかなかったからびっくりしちゃった」


「寧音がいちいち誕生日アピールしてくるから」


「さりげなくしてたつもりなんだけどな……」


「あれのどこがさりげなくだよ。……まあそれは半分冗談で」


「半分!?」


「俺が祝いたかったから祝ったんだ」



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