もうそばにいるのはやめました。


「俺らなんでほめ合いながらケンカしてんだろうな」



眉を下げ、口の端をほぐして、笑う。


その笑い方が好き。

バイオリンも好き。


円の全部が大好き!



「もうこのまま休けいにするか」


「うん!そうしよ!」


「ケーキ持ってくるわ」



はかどってない勉強を床に追いやり、スペースのできたテーブルにケーキを置いた。


切り分けられたロールケーキが、2枚のお皿に寝そべる。




「どう?上手にできたと思わない!?」


「……これ本当に作ったのか?」


「もっちろん!」


「本当に?」


「疑いすぎじゃない!?」




本当だってば!

料理下手ながら頑張って作ったの!


特に巻き方!
きれいな形になったでしょ?ドヤ!



「味もいいはず!食べてみて?」


「じゃあ……いただきます」



生クリームを泡立てすぎたこと以外はカンペキに仕上がった。


円の口に合うかな?



「……んまい」


「ほんと!?」


「クリームかたいけど」



うわっ、バレちゃった。

そこはごあいきょうということにしておいてください。



「でも、うまい」


「よかったぁ……」



デートの約束をしたときにすぐ、このワンピースとサプライズのケーキがよぎった。


あのときのお返しをするなら今だ!

そう意気込んで現在にいたる。


なんたって初デートだからね。


彼女っぽいことをしたかったの。


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