もうそばにいるのはやめました。
*
好きな人との時間ってどうして短く感じるんだろう。
休けい後は勉強に集中できた……のはウソだけど、しっかり取り組めた。
勉強を好きになった気がした。
それは円と一緒だったからで。
でもずっとそばにはいられないわけで。
もうちょっとで、また、“さよなら”。
「送ってくれてありがとう」
あーあ、着いちゃった。
古びたアパートの前。
足を止めたわたしは笑顔を作って平気なフリ。
「今日は楽しかった!」
「……俺も」
太陽から月へ主役交代した夜空は、円のかっこよさを引き立てていてひどくまばゆい。
まだそばにいたいな。
そう思ってるのはわたしだけ?
薄暗い外と相まって、不愛想な円を見ても察しがつかない。
「また、月曜日、だね」
「ああ……じゃあな」
「うん、またね」
円の背中に手を振る。
デートの終わりってなんだか寂しいな。
同居してたときに戻りたい。
月曜日が遠い。
作った笑顔はしおれ、振ってた手は力なく下がる。
早く家に帰って寝たら、その分早く月曜日が来るかな。
寂しさを押し殺してアパートの敷地内に入ろうとしたら、突然円が方向転換してこちらに歩いてきた。