もうそばにいるのはやめました。



「円?どうし……」



――チュッ。



……へ?

い、今の……!



静まり返る夜道に小さく響いたリップ音。


おでこにじんわりと残る熱と感触。


1秒にも満たなかった。

それでも想いを膨らませるには十分すぎた。



「い、今……円、おでこに……っ」


「……っ、お、おやすみ」



至近距離から見上げた円の顔は、真っ赤で。


たぶんわたしの顔も同じかそれ以上に赤らんでる。



一瞬寂しさがかき消された。


でも、一瞬だけ。

さっきよりもっと寂しくなっちゃったよ。



逃げるように走り去っていく円に「おやすみ!!」と叫べば、振り返って「しっ!」と注意された。


それすら愛らしくて、大きく手を振った。



寂しい……けど
チューしてくれたから大丈夫。




円の姿が見えなくなり、わたしは自分の家に帰った。


ただいまと告げても、中は真っ暗。


お父さんとお母さんは仕事でいない。



独りぼっちの家はやけに広い。


さっきまでの寂しさとは少しちがう感情に苦しくなる。



円もずっと苦しかったのだろうか。



12月24日はいっぱい好きって伝えよう!わたしからぎゅーもチューもする!隙間なんかないくらいそばにいる!


……そのためにはまずテスト勉強しなくちゃね。


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