もうそばにいるのはやめました。
*
寒空の下、ひとり
クリスマスムード一色の街中を散策
……って、この状況おかしすぎる!
12月24日。
とうとう誕生日が訪れた。
……なのに。
正午前、インターホンが鳴って出てみたら。
『ごめん円!1時間だけ外出てて?』
『はい?』
『お願い!』
両手に重たそうな袋を抱えた寧音に自分の家を追い出された。
どこまで秘密にする気だよ!
今日誕生日だぞ!?
「……さっぶ」
文句も言わずマフラーを巻いた俺はえらいと思う。
だけどクリスマスイブに商店街を1人で歩くのはけっこうきつい。
おかしいだろこれ。
デートじゃなかったのかよ。
あの2つの袋には野菜や果物が入ってたから、おそらく今料理を作ってくれてるんだろうけど……。
追い出す必要あったか?
部屋で待っててもよくないか?
あわただしく、それでいて嬉々として
俺のために料理をがんばる寧音の姿を想像する。
「……まあ、いいか」
誰かと誕生日を過ごすなんて小学生ぶりだし。
帰ったらあいつが待っててくれるし。
『ただいま』
『あっ、おかえり!晩ご飯できてるよ!』
『また焦がしたりしてねぇか?』
同居してたころに戻ったみたいに。
へたくそなサプライズも悪くない気がしてきた。
なんてにやけてるのが彩希にバレたら、またからかわれちまうな。