もうそばにいるのはやめました。
明るく派手になった部屋に不つり合いなかたくるしいスーツ。
整えられた黒髪。
しわの増えた、俺と似た顔。
こうやってまじまじと凝視するのは何年振りだろう。
「お嬢さまにお願いされたんだ」
「お、ねがい……?」
「いや、説教された、って言ったほうが正しいかもな」
お願い?説教?
よくわかんねぇが、寧音が父さんを連れてきたってことだよな?
……サプライズってこういうことだったのかよ。
なんでそんなこと……。
俺は寧音と過ごしたかった。
プレゼントだって悩みに悩んで決めたのに。
「お嬢さまが円あてに手紙を残して行ったぞ」
父さんの視線がキッチンの端に向けられた。
小さく折りたたまれた白い紙を手に取り、早速読んでみる。
『円へ
誕生日おめでとう!
勝手なことしてごめんなさい。怒ってる?』
怒ってるよ。
1時間待ったあげくに寧音がいないってどんな嫌がらせだ。
『本当は円のことを祝いたかったけど、今回は相松さんにゆずることにした。
円が相松さんを嫌ってることは重々知ってる。
だけど円も相松さんも不器用だから。
お互いすれちがってることに気づいてない!この先もずっとこのままなんてだめ!わたしが嫌!』
嫌って……なんだよ。
俺と父さんのことでなんで寧音がこんな必死になってんだ。
おせっかいなやつ。