もうそばにいるのはやめました。
『お互いすれちがってることに気づいてない!』
寧音からの手紙のとおり、本当に……?
「……あぁ、あれは、父さんのわがままだったな」
「わがまま?」
「あのときは……いろいろとボロボロで。ふとしたことであいつを思い出しては泣いてしまうくらい」
知らなかった。
泣いてるところも見たことがない。
俺の知る父さんはいつもビシッときめていて、しっかりしてた。
「話まで聞いてしまったら、円の前でもみっともなく泣いてしまいそうだと思った。円の前で“父親”になれなくなりそうだ、と。それが嫌で、格好つけたくて……円にはひどいことを言ってしまった。円も辛かっただろうに、自分のことしか考えてなかったんだ」
情けないな、と自嘲する。
「仕事にぼっとうしてたほうが楽だったんだ。そんな父さんが社長には無茶してるように見えたらしくて、よくパーティーやイベントに誘ってくれた。ありがたかった……けど、それでよけいに家に帰りづらくなって……」
語尾が小さくなっていく。
やるせなく一笑した。
「……こんなの、言いわけだな。ごめんな、円」
今になって謝るなよ。
ずっと意地を張ってた俺がバカみたいじゃねぇか。
口ごもる俺に、父さんは悲しげに苦笑する。
「……やっぱり、遅い、よな」