もうそばにいるのはやめました。
「そっ、……そんな、こと……」
ねぇよ。
そう続くはずが、今度は俺の声が急速的に弱まっていった。
驚いた。
父さんよりも、俺自身が驚いてる。
……俺、なに、言ってんだ。
遅いって
今さらだって
責め立ててやりたかったはずなのに。
つい、とっさに、否定していた。
本物のバカか、俺は。
「円は、優しいな」
父さんも、寧音も、なんで。
目尻にしわの数を増やして微笑まれ、どうすればいいのかわからなくなる。
思わず手元にあったコーンスープを飲み干した。
味わかんね。
いきなりほめてきたせいだ。
俺は優しくない。
優しかったら、とっくに父さんを許してるはずだろ?
「父さんのわがままにたくさん我慢をさせて……円の優しさに頼りすぎていた。自分が楽なほうを選んで……ほんと、ダメな父親だな」
すまん、と謝り目頭を押さえた。
さっきからずっと涙目だ。
『ふとしたことであいつを思い出しては泣いてしまうくらい』
母さんのことを思い出して?
今までのことを後悔して?
それともどっちも……?
「お嬢さまにも怒られてしまった」
「寧音に?」
「円をこれ以上苦しませるな、と」
「っ、」
「心の中で祝っても心配してても円には届かない。格好つけるとか帰りづらいとかどうだっていいから、そばにいられるときに……会いに行けるときに会いに行ってやれ、と。口実も準備も用意するからと、後押ししてくださった」