もうそばにいるのはやめました。


あいつは、ほんとに……っ。


どこまでお人好しなんだ。


なあ、寧音。
俺もう苦しくねぇよ。



『大丈夫だよ。わたしがそばにいる』


あの梅雨入りした夜も



『わたしも、そばにいたい』


両思いになった日も



『円の幸せを願ってます。すてきな誕生日になりますように』


この手紙だって



苦しさを幸せに変えてくれた。


今まで幾度となく、寧音が、俺を救ってくれたんだ。



目元に熱が帯びる。

おかしいな。父さんの涙がうつったのか?



「帰ってくるのが遅くなってすまん」



どんだけ謝るんだよ。

もういいよ。


結局俺はきっと


『あ、あのね、父さん!』


あのときの続きをしたかっただけだったんだ。



「おかえり……父さん」



オムライスを食べながらさりげなく言うつもりだったが、思いのほか恥ずかしい。



「た、ただいま……!」



父さんも照れてる。

だけどうれしそう。


……なら、いいや。



「これからは円といる時間をできるだけ増やすよ」


「……仕事は大丈夫なのかよ」



あ、一気に表情がくもりだした。

大丈夫じゃなさそうだな。


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