もうそばにいるのはやめました。


わたしを想って選んでくれたんだね。

その気持ちが一番うれしい。



髪をハーフアップにしてバレッタをぱちんと留めて。


寒かった首元にマフラーを巻いてみる。



「どうかな?」



とうに舌のやけどを忘れて、幸せオーラをふんだんにまき散らす。



「……か、かわいい、よ」



小難しい顔つきなのは照れ隠しでしょ?

知ってるよ。



「円のこと好きすぎてどうしよう……!」


「わかったから」



円の指に唇を挟まれた。


顔だけじゃなくて耳も、首まで赤くなってる。

わたしの愛、重すぎた?


キョトンとしていると、円の視線が周囲をさまよい始めた。


どうやらわたしの声は想像以上に大きかったようで、周りにいる客や店員に微笑ましく見られていた。



うっ……たしかにこれは気恥ずかしい。



しゅるしゅると身を縮める。


唇を解放した手は上へ移され、おでこを人差し指で突かれた。



「ばーか」



照れながらにらまれたって痛くもかゆくもない。


むしろドキドキして、ぽかぽかする。


目の前に大好きな円がいるんだから

仕方ないね。



恋したら皆バカになっちゃうんだよ。


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