もうそばにいるのはやめました。
遠くに光が見えてきた。
キラキラ、キラキラ。
空気を読んで星たちを忍ばせた、ぼんやりした夕闇を鮮やかに照らしている。
「わあっ……!」
近くで見るといっそうすごい。
きれいで、幻想的で。
まるで星空の中にいるよう。
うっとりしちゃう。
夢中になって円の数歩先を進んでいた。
一番奥までやってきて、円のほうに振り返る。
「ねぇ、円!」
すごくきれいだね。
来てよかったね。
そう続くはずだった声を喉の奥に押し戻してしまった。
なんて切なそうな笑顔で
わたしを見つめてるの。
この手をほどいたら、儚い光の世界に飲み込まれてしまいそう。
怖くなった。
手をぎゅっとした。
と同時に、その手を引かれた。
「ま、円……?」
空いてるほうの手をわたしの腰にまわされ、首筋に吐息がかかる。
ひどく頼りなげな弱さ。
黒い髪が人工的な星明かりを遮断する。
こんなところで抱きしめたら、また周りから注目されちゃうよ?
あ、でも、他のカップルもいい雰囲気だから関係ないね。
わたしたちもイチャイチャしてるように見えるのかな。
ちがうのにね。
これはイチャイチャなんて甘美なものじゃない。
ねぇ、そうなんでしょう?
あの笑顔で、この抱きしめ方で、それくらいわかるよ。
わかっちゃうよ。