もうそばにいるのはやめました。
「お前のほうこそ熱あんじゃね?」
「ねぇよ」
「俺には普段どおりなのな」
「は?」
「自覚症状ねぇのもやっかいだな~」
「さっきからなに言ってんだ」
「昨日なにかあったんだろ。プレゼント失敗した?」
「してねぇよ」
「あ、キス下手だったとか?」
「その口縫ってやろうか」
「アハハ、じょーだんだって~。竜宝さん相手だとお前ってとことん空回るよな。恋ってすげー」
「うっざ」
わかりやすいのは、円のほう。
大げさなくらい優しくして、無理してる。
無理、させてる。
きっとわたしが。
「相松くんって人前でべだべたする人だったっけ?まさかあたしへのけんせい!?」
「けんせい?」
「う、ううん!こっちの話」
けげんそうにしていた穂乃花ちゃんは、呆れ半分に一笑する。
「相松くんって独占欲強いよね」
「……たぶん、独占欲強いのはわたしのほう、かな」
意外そうに茶色い目がパチクリとまばたきした。
すぐに触れられる距離でいたかった。
そばにいてほしかった。
だけどそれは好きな人をしばりつけてるだけ。
お互いが苦しんでる。
こんなの本物の幸せじゃない。
「あたしには独占欲ないの?」
「え?」
「あたしも寧音ちゃんに独占されたいな」
かわいらしいおねだり。
はげましてくれてるのかもしれない。
「穂乃花ちゃんともーっと仲良くなりたいって思ってるよ?いつか親友になれたらいいなあって」
友だちや幼なじみはいるけど、そういえば親友という存在はいたことがなかったな。
「あ、あたしと?」
「うんっ!」
「!! あたしもなりたい!」
親友ってどうやったらなれるのかな。
恋人みたく気持ちがそろったらなってるもの?
関係って難しい。
ほのかちゃんと笑ってるほうが心がなごむなんて彼女失格だろうか。