もうそばにいるのはやめました。
*
午前中は学校。
午後はバイト。
バイトがあってよかった。
仕事に集中しているほうが、モヤモヤ悩まずに済む。
あっという間に午後8時。
閉店時間になった。
「竜宝さんお疲れさま」
「お疲れさまです!」
先週まで奥さんとケンカして痩せた店長は、今日はお腹を膨らませている。
仲直りできたんだなぁ。
一度頭を下げてから楽器店を去った。
街灯にともされた商店街を歩いていると、前方に見知った人影を発見した。
「ハルくん?」
「姫!」
紺のキャップをかぶったハルくんが、しっぽを振りながら駆け寄ってくる。
学校帰り……じゃないか。
学ランじゃないし。
「久しぶりだね」
「まさかこんなところでお会いできるとは!なにしてるんすか?」
「あそこの楽器店でバイトしてたの。その帰り」
「バイト先ってあそこだったんすね!」
「ハルくんは?」
「おつかいっす」
右手に持っていたビニール袋を軽く持ち上げた。
えらいねとほめれば、そんなことないっすとけんそんされる。
「……姫、元気ないっすね」
「ええ、元気だよ?」