もうそばにいるのはやめました。






午前中は学校。

午後はバイト。


バイトがあってよかった。


仕事に集中しているほうが、モヤモヤ悩まずに済む。



あっという間に午後8時。

閉店時間になった。



「竜宝さんお疲れさま」


「お疲れさまです!」



先週まで奥さんとケンカして痩せた店長は、今日はお腹を膨らませている。

仲直りできたんだなぁ。


一度頭を下げてから楽器店を去った。



街灯にともされた商店街を歩いていると、前方に見知った人影を発見した。



「ハルくん?」


「姫!」



紺のキャップをかぶったハルくんが、しっぽを振りながら駆け寄ってくる。


学校帰り……じゃないか。

学ランじゃないし。




「久しぶりだね」


「まさかこんなところでお会いできるとは!なにしてるんすか?」


「あそこの楽器店でバイトしてたの。その帰り」


「バイト先ってあそこだったんすね!」


「ハルくんは?」


「おつかいっす」




右手に持っていたビニール袋を軽く持ち上げた。


えらいねとほめれば、そんなことないっすとけんそんされる。



「……姫、元気ないっすね」


「ええ、元気だよ?」


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