もうそばにいるのはやめました。


「円がね、相松さんに一緒に住まないかって誘われたらしくて」


「へぇー、よかったじゃないっすか」



なんて関心のない棒読み。


なぜかふてくされるハルくんは、帽子を目深にかぶり直した。



「でもわたし……行かないでって言っちゃった」



わがままだよね。

ようやく家族の時間ができるはずだったのに。


独りじゃなくなることを望んでいたわたしが、つなぎとめてしまった。



『大丈夫。寧音のそばにいる』



言わせてしまった。

なにも大丈夫なんかじゃないくせに。



「……姫はそれほどあいつのことが好きなんすね」



ボソッと息苦しそうに呟かれた。


大きな口が小さく震えてる。



「いいじゃないっすか!自分の気持ちに正直でいることはなにも悪いことじゃないっす」



一転して明るくなった。



ハルくんはいつだってその人なつっこい笑顔でわたしを肯定してくれるよね。


心強い味方。

今まで何度もわたしを導いてくれた。



「だけど……円の気持ちを無視しちゃった」


「だからって強がってもまた苦しむじゃないっすか。どっちにしろ後悔するなら、どっちもやっちゃえばいいんすよ」



どっちも……?


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