もうそばにいるのはやめました。
ハルくんはブランコから腰を上げた。
わたしの前に移るとしゃがみこむ。
「僕は今でも姫のそばにいたいっす。できることなら一番近くで支えて、守っていきたい」
大きな手のひらがわたしの手を包んだ。
握らずに添えるだけ。
それでもあったかい。
「この気持ちは姫にとって迷惑っすか?」
「ううん!うれしいよ!」
「でも姫が一番そばにいてほしいのは、僕じゃないんすよね?」
ヘーゼル色の瞳がゆらり揺れる。
白くなった指先をきゅっと丸めた。
ぎこちなくうなずけば、あどけない顔が悲しげに歪んだ。
ごめんね、と。
謝るのはなにかちがう気がした。
「あきらめないっすけどね!」
「ハルくん……」
ニィ、と白い歯を覗かせて笑うのはわたしのためだって、知ってる。
「姫のそばにいていい資格……というか理由を、今一生懸命探してるんすよ!」
理由を、探す。
そばにいる。
そう感じられる理由を。
「あきらめない限り、可能性は無限大っす!少なくとも僕はそう思ってるっすよ」
この苦しさや寂しさを受け入れられる理由があれば
わたし自身も円のことも想って、大丈夫になれるだろうか。
ううん、信じればきっと。