もうそばにいるのはやめました。


「……俺のほうが大丈夫じゃねぇかも」



弱音をこぼす唇に、もう一度キスをする。



「でも相松さんと暮らしたいんでしょう?」


「……っ」



ごめん、と謝らない円の優しさが胸を締め付ける。


いいんだよそれで。

なにも間違ってない。


そう信じていたい。



リビングでピアスを開けた。


わたしが円の左耳を、円がわたしの右耳を刺す。



消毒した耳たぶの真ん中。

刹那の刺激と、わずかな痛み。


開けられるより開けるほうが緊張した。




「円、いつイギリス行っちゃうの?」



改めて耳を消毒しつつ問いかける。




「春休みくらいじゃね」


「そのときまでにはピアスホール安定するかなぁ」


「するだろ」


「ホールが完成したらコレつけようね」




円は赤い石。
わたしは黒い石のほう。


そのほうがお互いをより感じられそうだから。



円とおそろいの物って初めてだからうれしいな。

つけるの楽しみ。



「俺があっち行っても……う、浮気すんなよ?」



え!急にどうしたの!?

キュンてした!



「しないよ!するわけないじゃん!」



円と離れたら、円のことを今まで以上に考えるようになるんだろうな。


今円はなにしてるのかな。
あ、この料理、円と作った。

そんなふうにささいなことで円のことを思い出しては会いたくなっちゃいそう。


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