もうそばにいるのはやめました。
そう……かな。
わたし、変わった?
「1人で大丈夫だったか?」
「……1人じゃなかった。円も一緒だったから、楽しく過ごせたよ」
お父さんとお母さんがうしろにいる円を見つめた。
「円くん、うちの娘と仲良くしてくれてありがとう」
「慣れない環境で娘がずっと笑顔で暮らせたのは、円くんのおかげよ。本当に、本当に、ありがとう」
「い、いえ、そんな……!」
深々と頭を下げる両親に、円は焦った様子で頭を振る。
……わたしも。
伝えなくちゃ。
ありがとう、って。
「あ、あり……」
「それじゃあ寧音、一緒に帰ろうか」
言い切れなかった。
ううん。
言い切っていても、小さすぎて届かなかった。
「円くん、本当にありがとう。これ以上長居しては迷惑だろう」
「学校でも娘をよろしくね。おじゃましました」
ダンボール2箱を抱えたお父さんに続けてお母さんも外に出た。
わたしもここを出たら、同居が終わる。
当たり前になってた関係が終わっちゃう。
わたし、まだ、気持ちを伝えてない。
「寧音ちゃん……?」
「お父さん、お母さん!少し外で待ってて!」
ギィ、と取っ手を引いて閉ざした。