もうそばにいるのはやめました。
咲かない菊
今日はいつにも増して髪がくるんくるん。
調子がよくない。
……全体的に。
「ホームルーム始めるぞ」
始業式から戻ってきた教室。
夏休み明けだからか、どことなく明るい。
振られてなかったらわたしも明るかったんだろうけど……。
「はぁ……」
「ほう、新学期早々ため息か」
「!」
しまった!
不敵に微笑する先生を前に、あわてて丸まっていた背を伸ばす。
わたしの席は教壇の正面。
先生から一番よく見える席。
この席になって何度注意されたか……。
「たるんでるな」
「す、すみません!」
「ネクタイもゆるんでるぞ」
「すみませんんん……!」
1年生は赤チェックのネクタイ。
これでも10回くらい直した。
直して直して、このヨレヨレぐあい。
いつもなら最終的に円に頼んでいた。
だけど今日からは1人でやらなくちゃ!
もう一回結び直してみる。
……結果は、やっぱり下手くそ。
先生、これで許してください。頑張ったんです。
「センセー、竜宝さんがテンション低いのは新学期になってもそこの席だからじゃないっすか~?」
一番うしろから一段と陽気な声が響いた。