もうそばにいるのはやめました。



「わたしね、友だちまではいかなくてもフツーに話せるくらいにはなりたいんだけど、距離感がわからなくて……」


「好きだった人と友だちかぁ……。難しいよね」


「うん、すっごく難しい……!」


「……あたしだったらそもそもならないかも」




意外な返答だった。


だって穂乃花ちゃんは誰に対しても分けへだてなく優しくて、モテモテで、わたしなんかよりずっと友だちが多いから。



「好きだった人と普通に話なんてできない。どうしたって不自然になっちゃうもん。そのせいで自分が苦しむくらいなら、関わらないほうがいい」


「……関わらない……」


「そのほうが簡単だし、楽でしょ?」



相手が同じクラスだったら?席が近かったら?

無関係でいられる?


……無理だよ。


わたしには簡単でも楽でもない。



いくら関わらないようにしてたって、わたしのほうが先に円を見つけてしまう。



「……でも、今好きな人だったら、逆かな」


「逆って?」


「不自然さとか苦しみとかも丸ごと好きになっちゃう」



火照った頬に手を当てて恥じらう。


その姿は愛らしいのに……ひどく危うい。

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