もうそばにいるのはやめました。
あれは料理の猛特訓をしておいしくオムライスを食べたあと。
リビングに置かれたソレに目が留まった。
優勝。1位。その文字だらけ。
『バイオリンのコンクール……?円くんもバイオリン弾くの?』
『ああ。「も」って……まさかお前も?』
『うん!バイオリンとピアノを習ってたんだ』
『……どうせ下手だろ』
『へ、下手じゃないよ!……そりゃ優勝ばっかりしてる円くんよりは下手かもしれないけど……!』
円はときおり自分の部屋でバイオリンの練習をしていた。
壁をはさんで聴こえてくる演奏が大好きだった。
よくパッヘルベルの「カノン」を奏でていたっけ。
静かな朝日のような
心安らぐ、落ち着いた音色。
実際に円が弾いてるところを見たことはないけれど、きっと音色と同じ表情をしていたんだろうな。
「バイオリン?」
ハッとしたときには委員長を始め、全員の視線がわたしに集まっていた。
「え、えっと……その……」
「なにかいい案がありそうですね」
い、委員長にロックオンされてしまった……!
今さら「なんでもないです!」とはぐらかせない!