もうそばにいるのはやめました。
「寧音ちゃんがバイオリン弾くの!?」
「う、ううん!ちがうちがう!わたしじゃなくて……ま、円、が……」
「……相松、くん?」
ぱあっと満開に咲いた穂乃花ちゃんの笑顔が、きょとんと固まる。
「わ、わたしのクラスに相松円って人がいるんですけど、彼はバイオリンがとっても上手で、コンクールで何度も優勝してるくらい……本当にすごい人で……!」
「バイオリンのソロ演奏か……。野外ステージがにぎやかになる分、体育館ステージは感動を誘う雰囲気になっていいかもしれないですね」
だんだん力がこもっていった熱弁に、委員長がそしゃくしながらあいづちを打った。
他の委員会メンバーも同調する。
「……寧音ちゃん、相松くんのことよく知ってるんだね」
「そ、そんなことないよ。たまたまだよ」
「そうかな?」
「そう……だよ」
知らないことばっかりだよ。
同じ学級委員の穂乃花ちゃんだから知ってることもあるだろうし、同居する前の円のことも少ししか知らない。
円の全てを知った気になっていただけ。
「それじゃあ体育館ステージのエンディングは、相松円くんのバイオリンソロ演奏で企画を進めましょう!」
わたしの思いつきが大ごとになってる気が……。
円、嫌がらないかな?断る可能性だってあるよね。
だけど皆に聴いてほしい。
円の演奏は世界1だから。